先日、インバウンドビジネス展に出展した。テーマは「AI×インバウンド」。正直に言えば、最初は半信半疑だった。
訪日外国人の回復は続いている。一方で、現場の集客施策は“お決まり”になりつつある。インフルエンサー、OTA、広告、多言語サイト——もちろん重要だが、同じカードを切り続けている感覚も否めない。現場には「次の一手」が求められている。だからこそ、私たちはAIを集客のど真ん中に置いた提案を持ち込んだ。
2026年に向けて、AIの熱量はさらに高まるだろう。しかし、AIは“盛り上がる”ほど“儲かりにくい”。便利さが先に広がり、価値の値付けが追いつきにくいからだ。だからこそ、AIを「売り物」にするだけではなく、「集客・販促の仕組み」そのものに組み込む設計が要る。うまく使いこなせなければ、次のステージには立てない——そんな仮説を抱えながら、展示会に挑んだ。
私たちが描いたのは、PRと集客の“生成AIネイティブ化”だ。
企業のPR用ランディングページを、企画・構成・コピーまで含めて高速に回す。縦型動画やSNS広告の制作・改善を、運用と一体で回す。さらに広告配信は、P-MAXのような自動化を前提とした運用に寄せていく。そして、従来のSEOだけに依存せず、LLMO(AIO/AEO)を見据えた情報設計で“AIに参照される”土台をつくる。点の施策ではなく、線と面でつなげて「売上に近い集客」へ寄せていく構想だ。
とはいえ、日本ではAIリテラシーがまだ十分に浸透しているとは言い難い。会場でこのテーマがどこまで受け止められるのか。提案が先行しすぎて浮いてしまうのではないか。そんな不安も、当然あった。
結果は、予想と逆だった。
「AI×インバウンド」は、想像以上に反響が大きかった。話を聞いたその場で「すぐ打ち合わせしたい」と言われるケースが続出したのは、私たちにとっても意外だった。現場は、新しい“やり方”を待っていたのだと思う。AIそのものへの関心というより、マンネリ化した集客から抜け出すための“設計図”を求めていた。そう捉えると、反響の理由は腑に落ちる。
さらに興味深かったのは、会場の構造がもたらした偶然だ。同フロアで別テーマの展示も同時開催されていたこともあり、製造業の来場者が多かった。そこで複数のメーカーから聞こえてきたのは、「自社が前に出るのではなく、卸先・販売店の集客支援としてAIを活用したい」という発想だった。
これは示唆が大きい。製造業のAI活用というと、どうしても生産性や品質、保全といった“工場内”のテーマに寄りがちだ。しかし現実には、商流の下流——販売・販促・市場開拓——にも大きな余白がある。メーカーが販売パートナーの成果を押し上げられるなら、それは回り回って自社の成長にも直結する。「製造業×AI」は、現場(工場)だけの話ではない。フロント(販促)にも適用範囲が広がっている。展示会は、そのことを教えてくれた。
インバウンド領域そのものを追いかけるかどうかは、今後の戦略次第だ。ただ、今回の反響で確信したことがある。製造業メーカーが、卸先・販売企業の支援を“AIで強化する”時代が来る。そしてそのとき必要なのは、ツール紹介ではなく、PRと集客の実装知——企画、制作、運用、改善、そしてLLMOを含む情報設計の勘所だ。
mirAInews編集部として、もし私たちがその実装知の共有と底上げに貢献できるなら、これほど嬉しいことはない。現場の挑戦が、次の挑戦を呼ぶ。私たちは、そういう循環をつくる側に立ちたい。
(編集長デスク)