【取材】「おもちゃ化」で製造業のアジャイル開発を実現。株式会社ICOMAが語るフィジカルAIの未来とAI活用のリアル

ロボット・自動車

記事の要点(3行まとめ)

  • 【事業概要】株式会社ICOMAは「おもちゃ化」をコンセプトに、折りたたみ電動バイク『タタメルバイク』などのモビリティを開発するスタートアップです。
  • 【AI活用のリアル】アイデアの可視化や情報集約でAIを活用し効率化に成功する一方、「定性的な表現」には人間のセンスが必要という失敗・限界も経験しています。
  • 【今後の展望】AIが社会に溶け込むための「人間とのインタラクション(フィジカルAI)」を重視し、日本のモノづくりエコシステムのオープン化を目指しています。

1. 株式会社ICOMAの事業概要:おもちゃから始まるモビリティ開発

株式会社ICOMAは、2021年3月に創業したハードウェアスタートアップです。おもちゃの電動バイクの開発からスタートし、「四角い箱からバイクに変形する」というユニークな機構を持った折りたたみ電動バイク『タタメルバイク』などの開発・販売を行っています。

ICOMAの最大の特徴は、「おもちゃ化」という独自の開発メソッドです。従来の製造業では試作コストが高く、検証が後回しになりがちでしたが、ICOMAはアイデアをすぐにおもちゃのようなプロトタイプとして形にし、アジャイルな試行錯誤を高速で回すアプローチをとっています。

2. 製造業におけるAI活用の背景と成功例:効率化とアイデアの可視化

ICOMAでは、この「おもちゃ化」のサイクルを加速させるためにAIを導入しています。

AI活用の成功例(メリット)

  • アイデアの可視化・クオリティアップ: アイデアを思考する際の壁打ちや、特許資料のイラスト(人がロボットを撫でている図など)の作成にAIを活用し、圧倒的な時間短縮を実現しています。
  • 情報の集約と咀嚼: 膨大な情報をインプットする際、情報集約のためにAIを利用することで、脳の疲労を軽減し効率的なリサーチを行っています。

3. AI活用の失敗例から学ぶ:AIと人間の役割分担

AIAM mirAInewsの読者が最も気になる「現場での失敗や壁」についても、生駒社長はリアルな実体験を語っています。

AI活用の失敗例と限界

  • 「丸投げ」では期待するアウトプットが出ない: 気持ちのこもったレポーティング作業などをAIに任せようとノートブックに情報を大量に投入しても、激しく勘違いをした結果が出力され、期待値に届きませんでした。
  • 定性的な評価の難しさ: 大量のデータを処理・評価することはAIの得意領域ですが、人間の感情やセンスが問われる「定性的なもの」の生成はまだ困難です。

現場で得た教訓 ICOMAの現場が導き出した答えは、「0から1を生み出す部分と、90から100へ仕上げる最終的な判断は人間のセンスに依存する」という事実です。AIに対する理解度(解像度)を高め、ネジ1本まで構造を理解した人間が的確なプロンプトを与えることが、他社との差別化に繋がります。

4. 今後の展望:フィジカルAIの実装と「人間とのインタラクション」

現在、AI業界では「フィジカルAI(Physical AI)」がバズワードとなっていますが、ICOMAは「AIが社会に出るためのラストワンマイルは、人間とのインタラクション(相互作用)である」と定義しています。

例えば、ただのタイヤが付いたロボットモビリティであっても、「よしよしすると喜んでくれる(表情が変わる)」という機能を実装するだけで、子どもたちが触りたくなり、周囲の大人も「可愛い、欲しい」と共感するようになります。ICOMAは、難解なディープテックを人々に愛される「魅力的なおもちゃ(プロダクト)」へと翻訳する、社会への翻訳者としての役割を担っていく構えです。

5. 社会貢献と人材育成:オープンなモノづくりエコシステムを目指して

生駒社長は、「日本の新しいものを生み出すエコシステムが、もう少しうまく機能するようになってほしい」という強い思いを抱いています。

そのため、ICOMAでは自社の開発プロセスや技術を隠す(クローズドにする)のではなく、あえてオープンにする方針を貫いています。開発途中のものを公開することで、社内外に「自分でも作れるんだ」と見せることができる人を増やし、結果的に日本の製造業全体に良いプロダクトが生まれる文化(アントレプレナーシップ)を育成したいと考えています。


【編集後記(mirAI news 編集部)】 「AIに丸投げしても良いものはできない。最後は人間のセンスだ」という生駒社長の言葉は、まさに製造業の現場で生成AIと格闘する多くの担当者が“腹落ち”するリアルな実感ではないでしょうか。 製造業の課題である「重厚長大な開発プロセス」を「おもちゃ化」で軽やかに飛び越え、さらにAIを“優秀なアシスタント”として使いこなすICOMAの姿勢には、日本のモノづくりが再び世界をリードするためのヒントが詰まっていました。とくに「技術を社会に届けるためには、愛されるインタラクションへの翻訳が必要」という視点は、今後のフィジカルAI開発における重要な指針になりそうです。

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