紙と記憶に頼る品質保証が変わる——OTC医薬品メーカーが生成AIで進める薬事DX

その他製造業

記事の要点(3行まとめ)

【トレンド】:OTC医薬品製造の品質保証現場では、紙文書・分散情報・属人化という三重の課題に対し、生成AIを活用したナレッジ管理の導入が具体的な成果とともに報告されています。

【メリット】:手書き文書のOCR読み取りから報告書素案の作成までを一気通貫で処理することで、該当業務の所要時間が1時間から30分程度に短縮されたとされています。

【重要性】:品質保証・薬事領域では過去の品質イベントやレギュレーションへの即時参照が業務の前提であり、情報の一元化が対応スピードに直結します。

「あの件、どこに記録があったっけ」——そう思いながら棚を漁り、担当者に聞いてまわる。品質保証の現場では、情報を探す時間そのものが、見えないコストになっています。

【Q】いま現場で起きている「品質保証×生成AI」の変化とは?

富山県上市町に本社を置く株式会社池田模範堂は、かゆみ止め薬「ムヒ」で知られるOTC医薬品メーカーです。2026年に発売100周年を迎えるこの会社の信頼性保証部で、ある課題に長年向き合ってきました。

問題は情報の「在り処」でした。現場の記録は紙で残り、デジタルデータは別々のシステムに散らばっている。それをどこで探せばいいかを知っているのは、長くこの部門にいるベテランだけ——という状態が続いていました。特に品質保証・薬事の領域では、過去の品質イベントや規制情報をどれだけ速く引き出せるかが、対応の質に直結します。誰でも・すぐに・正確に情報へたどり着ける仕組みが、急務となっていました。

そこで導入されたのが、株式会社ファンリード(本社:東京都豊島区)が開発する生成AI活用ナレッジマネジメントシステム「STiV(スティーブ)」です。2026年5月19日に本格稼働が公表されました。

【Q】導入すると現場はどう変わる?(具体的なメリット)

まず変わったのは、情報を「探す」手間です。これまで複数システムに散らばっていた品質イベントの記録や外部レギュレーションを一か所に集約することで、調査業務にかかる時間が圧縮されたと報告されています。

次に大きかったのが、手書き文書の処理です。工場現場で記入された手書き書類を、OCR機能でその場でテキストに変換する。そこから報告書の素案まで自動で生成されるため、この一連の作業が1時間から30分程度に短縮されたとされています。ただしこれは池田模範堂での実績値であり、他環境での効果は異なる可能性があります。

さらに試験的に、逸脱報告書をもとにした「なぜなぜ分析」の素案作成にも生成AIを活用しているとのことです。担当者一人の視点では見落としやすい切り口を、AIが補う形で活用されています。

【独自考察】よくある失敗と「つまずきポイント」

導入して「使える」状態になるまでには、既存システムとどうつなぐかという設計が鍵を握ります。池田模範堂では、PoC(概念実証)の段階から既存システムとの連携を含む要望に対して伴走支援を受けていたことが公表されています。後から連携を足そうとすると、設計のやり直しが発生しやすい。最初から連携前提で動いていたことが、活用範囲の広がりにつながったと読み取れます。

もう一点、注目したいのが「全社展開」への視点です。信頼性保証部での導入を起点に、社内ハッカソンを通じてAI活用を全社に広げていく構想が示されています。一部門で終わらせず、組織全体への展開を最初から設計に織り込んでいる点が、この事例の特徴の一つです。

【Q】どこから始めればいい?(迷ったときの進め方)

まずは、次の順にチェックすると迷いにくいです。

1. 業務の中で「探す時間」が一番長い工程を特定する:
品質保証・薬事の業務のうち、検索・参照・報告書作成のどこに時間がかかっているかを洗い出します。この事例では分散情報の検索と手書き文書のデジタル化が先行課題として整理されています。

2. 既存システムとの接続可能性を先に確認する:
「導入したものの既存の仕組みとつながらない」という状況を避けるため、PoC段階から連携要件を整理しておくことが、この事例から読み取れる重要な進め方です。

3. 全社展開の入口を最初に決めておく:
一部門での成果を全社に広げるには、どの部門から始め、どう横展開するかの道筋を早めに描いておくと、定着のスピードが変わります。社内ハッカソンはその一例として挙げられています。


参考・関連リンク

1. 株式会社ファンリード:本導入事例の詳細インタビュー記事
株式会社ファンリード|STiV導入事例

2. 株式会社ファンリード:生成AI活用ナレッジマネジメントシステム「STiV」サービスサイト
株式会社ファンリード|STiV

3. 株式会社ファンリード:コーポレートサイト
株式会社ファンリード

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