ロボット審判「ABS」本格始動

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──プロ野球はAIでどう変わる?

  • 【トレンド】 MLBが2026年シーズンから、ロボット審判「ABS(自動ボール・ストライク判定)」を“チャレンジ制”で全球場に正式導入。プロ野球のAI活用が「実験段階」から「実装段階」へ移りました。
  • 【メリット】 ストライク判定の一貫性が高まり、抗議が減って試合もテンポアップ(先行するKBOでは試合時間が平均19分短縮)。中継では判定がほぼ即時に可視化されます。
  • 【重要性】 NPBもトラッキング基盤の整備が進み、「導入するか」ではなく「いつ・どう入れるか」の段階へ。ルールと戦略を今のうちに理解しておくほど、観戦も現場対応も有利になります。

「今の球、絶対ストライクでしょ!」「いや、あれはボールだって」──テレビの前で、球場のスタンドで、誰もが一度は口にしたことのあるセリフです。人間の球審が担ってきたストライク・ボールの判定は、野球の醍醐味であると同時に、長年の“もやもや”の種でもありました。

その常識が、2026年に大きく動きました。MLB(メジャーリーグ)が、いわゆる「ロボット審判」=ABSを全球場で正式に稼働させたのです。しかも「全部を機械が判定する」のではなく、選手が“異議を申し立てられる”という絶妙な仕組みで。

この記事では、ABSとは何かを専門用語ゼロで整理したうえで、現場(球団・監督・選手・審判、そして観戦するファン)が具体的にどう変わるのか、そして編集部の視点で見たよくある誤解や「つまずきポイント」、さらにファン・指導者・球団それぞれが今日からできることまでをお伝えします。「ニュースでは聞いたけど、結局どういうこと?」を、ここで一気に解消してください。


【Q】いま現場で起きている「ロボット審判(ABS)」の変化とは?

結論から言うと、ABS(Automated Ball-Strike System)とは、複数の高性能カメラでボールの軌道を追い、投球がストライクゾーンを通過したかどうかを機械が判定する仕組みのことです。テニスの線審でおなじみの「ホークアイ」技術を、野球のストライク判定に応用したものだと考えると分かりやすいです。ストライクゾーンは打者ごとの身長を基準に設定され、判定結果は球場のビジョンや中継画面にほぼ即座に表示されます。

ここで大事なのは、MLBが選んだのは「全球を機械が判定する完全自動」ではなく、「人間の球審がまず判定し、不服があれば機械に確認を求める」チャレンジ方式だったという点です。2026年シーズンから全球場で正式運用が始まりました。主なルールは次のとおりです。

  • チャレンジできるのは、投手・捕手・打者の3者だけ。監督やコーチは申請できません。
  • 合図はキャップやヘルメットを軽く叩くジェスチャー。判定直後に、その場で行います。
  • チャレンジ権は1試合あたり各チーム2回。成功(判定が覆った)した場合は権利を消費せず、延長戦では追加で付与されます。

世界を見渡すと、この流れはMLBだけではありません。韓国プロ野球(KBO)は2024年からいち早く全面導入し、判読率99.9%という高精度で運用しています。日本のNPBでも全12球団の本拠地球場にトラッキングシステムの整備が進み、データ活用の土台が整いつつあります。

この変化は、野球界が抱えてきた課題と直結しています。すなわち、**「判定の公平性・一貫性」(人による判定のばらつき)と、「試合時間の長さ」(間延びによるファン離れ)**という、競技として長年の宿題です。ABSは、この2つに同時に手を打つ一手として登場したわけです。


【Q】導入すると現場はどう変わる?(具体的なメリット)

抽象的に「公平になる」と言われてもピンときません。実際の数字と場面で見ていきましょう。

  • 判定のばらつきが減り、抗議が消える:全面導入したKBOでは、球審への判定抗議がほぼなくなったと報告されています。「あの判定さえなければ」という後味の悪さが減り、選手・監督・ファンの評価もおおむね良好です。
  • 試合がテンポアップする:KBOでは導入後、試合時間が平均で約19分短縮されたとされています。判定をめぐる中断や口論が減ることが大きな要因です。
  • 確認は驚くほど速い:MLBの2025年オープン戦では、チャレンジ1件の処理にかかった時間は平均13.8秒。試合の流れをほとんど止めません。
  • “正しさ”が可視化される:判定結果が中継やビジョンにすぐ表示されるため、視聴者も「今のは本当にストライクだった」と納得しながら観戦できます。
  • 新しい駆け引きが生まれる:同じオープン戦では、チャレンジによって判定が覆った割合は52.2%にのぼりました。つまり「約半分は覆る」わけで、いつ・誰がチャレンジを使うかが勝敗を左右する新たな見どころになっています。

とりわけ見逃せないのが、この52.2%という数字が「これまで人間の判定にそれだけの誤差があった」ことの裏返しでもある、という点です。ABSのメリットは「機械の勝ち・人間の負け」ではなく、“人間には物理的に難しかった判定”を補い、選手が全力を出した結果が正しく報われる環境をつくることにあると言えます。


【独自考察】よくある失敗と「つまずきポイント」

華々しいニュースの裏には、必ず“誤解されやすい点”と“見落とされがちな副作用”があります。ここは編集部の視点で、率直にお伝えします。

つまずき① 「これで全部の球を機械が判定する」と思い込む 最大の誤解がこれです。MLBのABSはあくまで**チャレンジ制の“補助”**であり、基本は人間の球審が判定します。「ロボット審判=全自動」というイメージで語ると、実態とズレます。制度を語るときは「人間が主、機械が確認役」という関係を押さえておくことが大切です。

つまずき② 「人間味が失われる」論と、本当の副作用を混同する 「機械化で野球の情緒が消える」という声はよく聞きます。ただ、より現実的な影響は別のところにあります。たとえば捕手の“フレーミング”(際どい球をストライクに見せる捕球技術)の価値が下がるなど、これまで評価されてきた技術の意味が変わることです。感情論だけでなく、こうした技術・戦術面の変化にこそ注目すべきです。

つまずき③ 「NPBもすぐ入る」と期待しすぎる 日本での本格導入は、MLBほど早くは進みません。NPBはトラッキング設備の整備がMLBより遅れており、地方開催の球場への対応、審判組合との調整、コスト負担など、越えるべきハードルが複数あります。選手会は前向きとされますが、公式な導入スケジュールはまだ示されていません。「来年からNPBでも」と決めつけると、話が空回りします。

つまずき④ チャレンジは“権利”ではなく“戦術”になる 1試合2回という限られた権利を、序盤で無駄遣いすると、勝負どころで打つ手がなくなります。実際、先行事例のデータでも、フルカウントや終盤ほどチャレンジの使用率が高まる傾向が見られます。「いつ使うか」の判断力そのものが、勝敗を分けるスキルになりつつあります。

つまずき⑤ 「体感のゾーン」とのズレに戸惑う ABSのストライクゾーンは打者の身長を基準に機械的に設定されます。そのため、長年の“目で見た感覚のゾーン”と微妙に食い違い、選手・ファンとも最初は違和感を覚えることがあります。これは慣れの問題ですが、導入初期には避けて通れないポイントです。


野球とAIの関係は、もう「来るか来ないか」ではなく「どう付き合うか」の段階に入りました。まずは次の試合を、ABSという新しい視点で観てみてください。それが、変化を楽しむいちばんの第一歩です。


参考・関連リンク

  1. 企業名:MLB(Major League Baseball 日本語版ニュース) タイトル:ABS(ロボット審判)チャレンジ制度、2026年から正式導入 URL:https://www.mlb.com/ja/news/abs-challenge-system-mlb-2026
  2. 企業名:AI総合研究所 タイトル:野球界でのAI活用事例|AI審判・選手分析・怪我予防の最新動向 URL:https://www.ai-souken.com/article/baseball-ai-application-cases
  3. 企業名:データスタジアム株式会社 タイトル:野球の作戦成功確率を予測するAIを開発(日本テレビ系プロ野球中継向け) URL:https://datastadium.co.jp/news/byH7wizZ

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